テキトー雑学堂 タイトルバナー

人文・思想 その24「日本の文化力 美味しさのクロスオーバー 鍋」


本 以前、このジャンルの「人文・思想その7 弁当 Bento 超コンパクトな食卓」で、次のような事を書きました。「日本人は大名や貴族(華族)などを除けば、極めてコンパクトな食卓を作り上げているのではないかと思います。(その極めつけは『鍋』ですが、これも大ネタですので、いずれ改めて)。家での食事と同じ食卓を弁当箱一つでどこにでも持って行ける」。これまで、「丼物&おにぎり」や他のジャンルでも「カレー」「レトルト食品」「即席ラーメン」「お茶漬け」など、「日本の食文化」について書きましたが、その究極はやはり「鍋」です。これまで書かなかったのは「忘れていたから」です。書きます。
   
「鍋」、即ち「鍋料理」ですが、これは別に日本独自のものではありません。まず中国の「フォクオシュイチャオ(鍋で餃子を煮る)」「サオヤンロウ(羊肉のしゃぶしゃぶ)」、韓国の「チゲ(ご存知、あの辛ーい鍋)」「チョンゴル(甘ーい鍋)」、フランスのブイヤベース、スイスのフォンデュ。他にもタイの「タイスキ」や、ベトナム、チベット、ポルトガル、モロッコなどにも鍋料理はあります。その器を「鍋:なべ」と呼んでいるかどうかは知りませんけど(呼ぶか…)。しかし、ブイヤベースやフォンデュを「鍋料理」とはちょっと言い難いし、他のものを見ても、「煮物料理」といった方が良いような気がします。理由は、バリエーションです。日本の「鍋料理」には、一体どれだけの種類があるのでしょう。「寄せ鍋」「湯豆腐」「水炊き」「ちゃんこ鍋」「もつ鍋」「ちり鍋」「しゃぶしゃぶ」「おでん」「てっちり(フグ鍋)」などなど。「すき焼き」も鍋に入るのかな? さらに列挙するとこんな数では収まりません。「鴨鍋」「シャモ鍋(軍鶏)」「ボタン鍋(猪)」「キジ鍋(雉)」「牡蠣鍋(土手鍋)」などなど。郷土料理として挙げればキリがありません。

しかし、そのコアとなるのは「寄せ鍋」であると思います。「寄せ」。この言葉にこそ日本の鍋の「文化力」ともいえるものがあるのではないでしょうか。何でもかんでも鍋の中に叩き込んで、様々な「旨味」を、まさにクロスオーバーさせて楽しむ。某芸人の言葉をパクれば「旨味の宝石箱」、更には「旨味のオーケストラ」です。スポ根漫画の傑作、「巨人の星」には「闇鍋(やみなべ)」なるものが出てきますが、これは食うためのものではありません(食わされますけど)ので除外。日本の鍋は基本、鍋とだしがあれば、成立するのです。その組み合わせは大袈裟ではなく無限。何でも取り込んでしまう文化の原点がここにあると考えます。「美味いもの、良いもの」は何でも取り込んで、更に美味いもの、良いものへと進化させる力。
    
鍋の原型は、日本家屋の囲炉裏から生まれたのでしょう。この囲炉裏は夜の照明と暖房を兼ねたもので、その上に載せている鍋に水を入れておけば、加湿器にもなりますし、何時でもお湯が飲めます。そして、この囲炉裏は家の真ん中にあり、「食事の場」でもあるのです。その鍋の中に畑で採れた野菜や、川で獲れた魚を入れれば、ハイ、鍋の出来上がりです。あとはご飯を入れる椀と箸があれば食事ができます。「丼」「おにぎり」や「お弁当」同様、極めて合理的な食事形態です。多くの調理器具や食器を必要としません。特に「鍋」はその合理的な形態だけではなく、「美味しさ」「旨さ」という事でも豊かな文化性を持っていると考えます。それを支えているのは「味噌」そして「醤油」という、極めて完成度の高い調味料でしょう。日本に「様々なスパイス」が根付かなかったのは、この二つの調味料の完成度が高かったからとも云われています。もちろん、新鮮な食材が手に入りやすい国土ですから、その必要が無かったともいえますけど。

「調理」と「食事」が同じ場所で出来るというのも「鍋」の特長です。もちろん「切る」などの下ごしらえはあるのでしょうが、煮ながら食うというのが、囲炉裏を持つ日本の家屋の食事形態となり、江戸時代に入って、囲炉裏の無い町屋や料理屋でも火鉢などを使って、少人数用の鍋料理が確立したのでしょう。囲炉裏の上には耐久性の高い「鉄なべ」でしょうが、少人数で火力を効率よく使うには「土鍋」です。この「土鍋」は熱伝導率が低いので、火をジックリと通し、一旦温まれば冷めにくい。長時間でも煮ながらゆっくり食えるのです。だから「鍋を囲む」ことができる訳で、現代では「鍋」が家族の団欒の象徴ともなっています(一人鍋というのも出現していますが…)。
   
ちょっと、話が脱線するかもしれませんが、何故この「鍋」のテーマをこのジャンル「人文・思想」に入れたのか、ですが、人文科学は「人間性:Human nature」を研究する領域であると思っているからです。人類学、民俗学、哲学、教育、心理学、文学など、まさに「文化」を対象とするジャンルであると考えるからです。「鍋」を考える時、どうしても日本の文化に考えが及んで行くのです(変…?)。云ってみれば東洋の小国に過ぎないこの国が近代に入って、弾けたように、突然、世界の表舞台に飛び出して行きます。それを考える時、この国の「文化」の特長である、「他国の文化を抵抗なく採り容れ、そして自ら変容していく」という姿の不思議さに思いが至ってしまうのです。通常「文化変容」というと、文化人類学で「文化の高いものが、文化の低いものを変容させる」という意味で使われますが、この国はそれを自ら行ってしまうのです。

変容とは「相手に吸収され、自らは滅ぶ」という事でもあるのです。しかし、この国は吸収もされず、滅びもせず、連綿と(独自としか言えない)文化を平気で保っています。保守と革新、自由自在です。その柔軟性のルーツはどこにあるのか? ハイ、それが「鍋」なのです。何を入れようが「美味しい」、どんどん入れれば「さらに美味しくなる」、何を入れても「鍋は鍋」です。入っているものはとにかく美味しく平らげてしまう。そうした姿をこの日本の「文化的」な底力、面白さと見てしまうのです。さあ、美味しい鍋を頂きましょう。まさに、なんでも来い!「鍋」に入れて、「いただきます」です。

人文・思想 目次へ



【商品検索】Powered by Amazon

↑「すべて表示」をクリックするとAmazon.co.jpの検索結果一覧に移動します。

■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
木の音 バナー
「あれこれブログ風」サイト
「不思議」「怖い」「変」を普通に考える。 バナー
「花を楽しむ」サイト
花を飾る バナー


■サイトポリシー ■プロフィール
■お問い合わせ
ページトップへ戻る

Design by Megapx / Template by s-hoshino.com
Copyright(C) Ureagnak All Rights Reserved.