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科学・テクノロジー その13「伊四〇〇型潜水艦 政治不在の軍事…」


本 私が、このサイト各編のテーマに「旧日本の軍事技術」について書く事が多いように思われるかもしれませんが、決して旧大日本帝国を賛美したい訳でも、偏狭なナショナリズムに酔いたい訳でもありません。歴史好きにとって、まだ生きている者から直接話の聞ける日本の歴史的事実としての軍国主義時代、その後の大レジームチェンジを通じて、この国の「宿痾(長く治らない病気)」と、その「アジアの中でズ抜けた技術力」の本質なるものを考えてみたいからです。一つ目の「この国の宿痾」とは、「最終的な政治目的を曖昧にしたままの大暴走」を起こしやすい事です。故に周辺諸国から警戒される。日本の開戦は「ハルノート」に大きな直接要因があると思います。その辺りの事は本サイト「歴史・地理その8」に書きました。例え、予定調和的と思われようとも、そう考えています。

間接要因はキリが無いので省きますが、一つだけ言えば、世界で3本の指に入る自らの海軍力を過信した事でしょう。二つ目はそのままなのですが、この国は、絶対神や絶対権力者を持たない(嫌う?)ため(本サイト「社会・政治その6」に書いたテーマです)に、そもそもが原案(元)とその模倣との間にそれほどの差(境界が希薄)を認めない面白い特徴を持っているようです(何で読んだ説かは忘れましたけど、アグリーです)。根っこに「無常観」がありますから、模倣に抵抗が無いのです(どこかの国のパクリとは違います。あれは偽物作り)もっと砕けた表現をすればオリジナルという「元」「ヘソとなるべき所」がアヤフヤなのです。これは一つ目の問題である「この国の宿痾」とも絡みますが、つまりはそこに、極端な短所と驚くほどの長所が「同根」であるというシンプルな事実が見えてくるという事です。
  
繰り返しますが、この国の歴史には「絶対的な支配者」という者が存在しませんでした。信長と秀吉がちょっとそれに近い所まで行きましたが、それは「権力」のみで、「絶対的な支配者」となるために必要な「権威」は持てませんでした。「権威」は御所の奥深くにあり、「権力」がどうしようと手に入れられないほどに堅牢な結界に守られて…、ではなく、捉えきれない存在だったのです。不遜ながら、これが先ほどの権威ではあっても中心点が存在しないアヤフヤなもの、しかし確固たるものであったという、知る限り、他に事例のない「在り方」です。中国には「天」というものがあり、易姓革命という大義名分がありましたが、「天」であればどうにでも「権力」の上に被ってきます。日本の権威というものは「存在」としかいいようが無く、それこそ日本の全ての人間の意識・無意識を問わず、その総意の元に「存在」し続けていたのです。日本の「権威」は沈黙したままで、まさに近世ヨーロッパで明文化された「君臨すれども、統治せず」の形を遥か昔(どこからかは?)より連綿と継承していたと言えます。

前置きが長くなりましたが、「この国の宿痾」とはそうした歴史的経緯から生まれたものだと思います。海外の人や国が「日本は理解しにくい」と感じるのはそれが原因なのでしょう。権力と言っても、その時々の政体であり、日本という国家のアイデンティティは「権威」側にあるため、「権力」に明確な「国家像」や「国益」「戦略」というものが生まれにくい。勢い、内向きにならざるを得ない。私見ですが、グローバルと言ったら「英語力」という単純な答えしか出てこない程度です。戦後の日本経済復興に英語なんて絶対的な必要事項でしたか? ではこの国はただの二流国家か、と言えば「技術的」にはそうではない。逆に、「権威(大抵保守的)」そのものに縛られないから自由闊達に「想像力・創造力」を働かす事ができるのだと考えます。良いものがあれば取り入れる(模倣)のに何の抵抗もない。そして、その上にさらに「創造」を加え、より良いものに作り上げていく。実に単純な図式で、特段の抵抗も起こらない。ある意味でオリジナルへの敬意が足らなくなるとも言えます。その分、基礎的な領域より応用的な領域が強くなってしまうのでしょう。
  
本テーマの「伊四〇〇型潜水艦」ですが、この特殊兵器が、これまでに延べてきたこの国の特徴を誠によく表していると思います。零戦も戦艦大和も同じようなものでしょうが、この「伊四〇〇型潜水艦」はとんでもない戦略兵器です。簡単にその概要を説明すれば、全長122m(巡洋艦並み)でその船体に水上(飛行機)機を3機収容して潜航できます。潜水艦というより「潜水空母」です。最も驚くべきはその航続距離で、(理論的には)一度の給油で地球をほぼ一周半(約65,000km)航行可能な点です。これは、本土から世界中、ほぼどこへでも往復可能という事です。私はそれらしきものを旧日本が持っていたというのは聞いた記憶がありますが(宝田明主演の古い特撮映画で登場していました。想定はパナマ運河攻撃)、実物の写真も見た事なかったですし、ジェット気流に乗せて飛ばす風船爆弾のような苦肉の兵器(とはいえ風船爆弾、正式には気球爆弾ですが、史上初めて大陸間をまたいで使われた兵器で、多少の戦果はあったようです。手作りICBM…)といった少々SF的なイメージしか持っていませんでした。実際にあったのかどうかも怪しいですし。

それが2005年、2013年に海底から見つかりました。これは戦闘による沈没ではなく、戦後、米軍に拿捕され調査後に沈められたものです。「伊四〇〇型潜水艦」は3隻あったそうですが、その2隻までが見つかったということでしょう。この潜水艦は、山本五十六がアメリカ東海岸への攻撃用に発案したという説がありますが、その真偽はともかくとして、いくら驚くべき兵器とはいえ、攻撃力の高い兵器を伴わなければ、行ってきただけになります。と思っていたら、やはり、生物兵器(ペスト菌、炭疽菌などの細菌兵器)を使う考えがあったようです。

本来潜水艦は対艦兵器であり、陸への攻撃は前提としていませんが、この「伊四〇〇型潜水艦」はその後の潜水艦からの弾道ミサイル発射へと行き着く原型になっています。ここでもう一つ驚くことは、陸軍参謀の「非人道的である」という理由から、その生物兵器使用は中止されています。日本は、落とす必要もない核爆弾を二度も落とされていますが…。ちなみにその「非人道的」という判断はいくら崇高であれ軍人が下すべきものでしょうか? それは政治によって判断されるべきものと思います。
  
戦争とはあくまでも外交の最終手段であり、軍も兵器も「目的」があって作られるものです。この「伊四〇〇型潜水艦」は何の目的のために膨大な労力・コストと知恵を費やして作ったのでしょうか? まさか、アメリカの東海岸を占領しようとしたのでしょうか。完璧に無理です。他国を威嚇するための(政治的)戦略兵器だったのでしょうか。潜水艦は軍事の中でもトップシークレット(知られては作戦行動に支障が出る)で、そういう役目なら空母や戦艦の方が適任です。ぶっちゃけ噺、本当に「何の目的で作ったのか分かりません」です。実際、これといった戦果も上げず、接収したアメリカ軍をその軍事技術の高さで「驚かせ」はしたようですけど…。そして、ソビエトにその秘密が渡るのを恐れたアメリカによってハワイ沖に沈められてしまったという、泣くに泣けない最期を迎えます。もう一度言います。「これ程に驚異的な兵器を何のために作ったのですか? これでどうしようと思ったのですか? 最後はやはり特攻? もう、最初に特攻をやった時から軍の体裁は失っているのですよ」。その当時の政治家たちに聞いてみたい…。

政治目的も無しにひたすら軍が暴走して、「神技」に近い技術力を全く不毛の兵器作りとして浪費していく。「この国の宿痾」とは四方を海に囲まれている閉鎖性故の政治的進化の著しい遅れ。と同時に持つ、針の穴からしか見えない世界の景色に対する「憧憬」と、その情報不足を「想像」で補う類稀なる「創造性」から生まれる「ズ抜けた技術力」。政治的未熟と神技的技術力が同居する国、それが日本であると考えざるを得ません。具体的にそれがどういう悲劇をもたらしたかといえば「戦争を始めたのはよいが、どうやって終わらせたらいいか分からない」ため、中途半端な強さ故、近代の消耗戦の中でズルズルと国力を失っていくという事です。日本は「占領」なんて経験した事は無いので(されたことは一度あります)、それをもって戦争の終結とするなんてシナリオは書けません。余談ですが、お向かいの国は「委託統治(日韓併合は時代の気分が作った言葉でしょう)」であり、満州は「傀儡政権の軍事的支配」です。

「伊四〇〇型潜水艦」にもし口があったら、私と同じことを言うでしょう。「俺は何のために生まれてきたんだ。誰か答えろ!」。

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