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科学・テクノロジー その2「ダマスカス鋼の謎 力と神秘の象徴 剣」


本 >えー、日本刀の事を歴史・地理の編に書いていたら、どうしても「ダマスカス鋼」の事も書いてみたくなりました。こちらもテクノロジーと歴史が重なるテーマなのですが、ダマスカス鋼となるとどうしてもテクノロジーと考えますので、こちらに書きます。タイトルが、そのダマスカス鋼と別のテーマが2つ一緒になっているようですが、ここが雑学の所以で、とにかく書きます。要は「鉄」がここでのテーマなのです。鉄の起源は一般に紀元前2000年のオリエント(ヒッタイト帝国、アッシリア)といわれています。事実その遺跡から鉄の遺品が出ていますし、古代、青銅器が中心だった時代に、ヒッタイトは無敵の強さを誇る国であったようです。それはそうですよ、青銅に比べれば、鉄は強力極まりない武器であったに違いありませんから。当時の最新兵器でしょ。それ以前にも鉄は装飾品としてあったそうですが、酸化鉄から精錬されたものではなく、隕鉄(隕石)から作られたものなのでは。

鉄は自然界では酸化鉄(もしくは硫化鉄)の形で存在していますが、鉄の精錬とはその酸化鉄を「脱酸素」することで、比較的低温でも可能らしく、溶かす(1500℃)事に拠って鉄を得ることができるようです。ただ、昔の方法だと1200℃が限界で、いずれにしても鉄は「鍛えて」不純物を叩き出したり、鉄の分子どうしをくっ付けてやらなけばならないので、日本刀を作った当時は相当に鍛える必要があったのでしょう。だから、強くてしなやかな刀身が出来上がった、と。もっとも、鉄に限らず金属の精錬についてはその起源に関して、よく分かってはいないようです。
  
で、ダマスカス鋼ですが、ご存知の方はあの独特の「木の年輪」か「流水」と表現できそうな美しい模様に魅入られた事でしょう。ダマスカス鋼はインド発祥のウーツ鋼で、ウーツとは「硬い」とか「ダイヤモンド」の意味だそうです。そのウーツ鋼がダマスカス(シリア)で刀剣等に加工され、中世の十字軍によってヨーロッパにもたらされ、その剣としての性能の高さ(日本刀と同じく、しなやかで切れる)から、このダマスカス鋼の剣を持つ事は騎士たちの誇りであったようです。ただ、ダマスカス鋼は日本刀のように「折り返し鍛造」ではなく、「鍛造」なので、鉄に含まれる不純物が作り出すあの模様をそのまま地紋として残せたのでしょう。日本刀にも刃紋(直刃、乱れ刃、小乱れ、瓦の目、三本杉等)はありますが、あれほどにド派手な文様は、皆焼(ひたつら)といって刃だけではなく棟まで全体を焼いた日本刀でも追いつきません。

ダマスカス鋼で打った剣は「もし絹の布が刃の上に落ちると自然に真っ二つとなり、鎧を切っても刃こぼれせず、しなやかで曲げても折れない」と言われますが、これは日本刀にも同様の言われ方があり、正直言って眉唾物です。余談ですが、日本刀にも「八町(800m位)念仏」といって、斬られた者が八町ほど念仏を唱えて走り逃げ、そこで真っ二つになったとか、「石灯籠切り」とかありますが、まあ、誇張された話でしょう。確かにダマスカス鋼で造られた剣は高性能であったようです。しかし、現在ではその製法が正確に伝わっておらず、再現ができないそうです。製法は「一子相伝」とかで、文物には残っていないようですね。いろいろな技術者や学者がその製造にチャレンジして、ある程度は再現できるようになったようです。ナイフや包丁などでも専門店に行くとダマスカス鋼風のものが売っています。美しくはありますが、それをダマスカス鋼とは言えないでしょう。オヤジギャグで「騙すかす鋼」とは言えますけど…。

あの文様を再現するためには材料の組成だけではなく、技術まで再現できなくてはならない訳で、今は絶えているその技術を再現できたとしても、それを本物と認める術がないという事になります。ダマスカス鋼は錆びにくい(錆びない訳ではない)という特長も持ち、そこも日本刀と同じですが、千数百年錆びない「不思議」で有名な「デリーの鉄柱」も、古代インドの優れた鉄の技術で造られたものなのでしょうから、ダマスカス鋼と同根であるといっても良いのではないでしょうか。いずれにしても、現代の方が技術が進んでいるというのは、一概に言えません。素晴らしい技術が謎のまま消え去っています。一般的な技術に関しては概ね「西高東低」ですが、こと、鉄に関しては「東高西低」です。古代インドのウーツ鋼だけでなく日本にも、島根県の安来鋼(やすきはがね)のように冶金学的にも非常に優れた鉄があります。
     
ちなみに、剣はしばしば権威や権力の象徴になったり、神秘的な話が付いて回るものです。特に、怪物であるヤマタノオロチの尾から出てきた剣とか、高い山の上の岩に突き刺さっていて、それを抜いたものは王になれるとか、類似した話は世界中に残っています。これは、古代、鉄を支配し、その鉄から作る剣を持つものは最強であり、近隣諸国を睥睨できた、という事のシンボリックな話でしょう。それが様々な英雄伝説を作ってきた訳です。確かに、鉄という素材、そして剣というのは、何か人の心を捉え惹きつける魅力があります。至上のダマスカス鋼による剣を腰に佩いた王や騎士はどれほどの人々を平伏させたのか。剣はただの金属加工品ではなく、力と神秘の象徴だったのでしょう。魔力を持つ剣が存在するのもあながち虚構とも言いきれないかも、です。

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