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科学・テクノロジー その29「ニュートンに消された肖像 ロバート・フック」


本 ロバート・フック(1635年~1703年)という学者の名前をご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。その業績を聞けば、「ああ、あの学者か」と思われる方は多いと思います。ロバート・フックはその業績に比して、どうにも知名度の低い学者であると思います。その業績とは、ばねの伸びと弾性限度以下の荷重は正比例するという「フックの法則(弾性の法則)」、生物の最小単位を「細胞(Cell)」と名付け、単位としての細胞を最初に世界に知らしめ、その「顕微鏡図譜」は、当時の顕微鏡の倍率(数十倍程度)から考えれば、驚くほど精緻なイラストレーションで、その対象は「シラミ」や「ノミ」や「ハエ」など。フックはその顕微鏡で「コルク」を観察し、そこに微小な網目状の組織を発見し、彼はそれを「小部屋:Cell(=細胞)」と呼びました。正確には、細胞そのものではなく、コルクの細胞壁の名残を見たのですが、フックは、生物が細胞(cell)から成り立つことを最初に見出した人物でしょう。その詳細なスケッチを見て、当時の人々は驚いたことでしょう。今見てもその描写力には驚かされます。

フックは「力学」「生物学」だけではなく「天文学」「建築学」にも多彩な才能を発揮し、ある歴史学者は彼を「イングランドのレオナルド・ダ・ヴィンチ」と称したそうです。彼は「現存する最も古い科学学会、ロンドン王立協会」創設初期の会員です。彼の発明品の一つに「ぜんまいバネを使った懐中時計」がありますが、ぜんまい時計自体はそれ以前にもあり、彼の発明はその精度を上げ、携帯のための小型化を促す「脱進機(アンクル:時計の規則正しい運動を繰り返す機構)」であったと思いますが、その特許は取っていませんでした。その「世界初の実用的な機械式時計」製作の名誉は、オランダのホイヘンスに譲ることとなり、フックは富を得る機会を逃しています。この辺りは彼の「社会的に不器用」な一面を示していると思います(多忙過ぎて特許を取っている暇が無かったという話もありますが…)。とはいえ、「アンクル脱進機」はフックの発明であると歴史にその事実は留められています。

かように、天才的なその力で17世紀の「科学革命」の主役でもあった、時代の寵児ともいえるロバート・フックですが、何とも不思議なことに、その姿を写した肖像画が一枚も残っていないのです。長く、1枚だけ残っていたロバートフックの肖像画は別人のものであることが判明し、フックの肖像とされるのは「想像」で描かれたものしかありません。王立協会にはその肖像画が飾られていたはずですが、フックの死後、ニュートンが新たな王立協会長となり、その建物が移転する際に、何故かフックの肖像画が行方不明となり、未だに発見されていないそうです。その背景には、ニュートンとフックとの確執があったとされています。ニュートンがフックの肖像を消してしまったと。

ロバート・フックのその人柄、性格を語る記録には、あまりろくなものが無いようです。「短気で気位が高く、知的論争で相手を不快にさせる傾向があった」とか、「卑劣で陰鬱で人を信用せず、嫉妬深い」であったとか…。確かにそういった面はあったのかもしれませんが、フックほどの業績を残しながら、その死後、肖像画が1枚も残っていない事は元より、人柄まで貶められていることには何か釈然としません。もし、それほど性格が悪いのなら、「名誉欲」が強く、自分の立場を利用してその名を更に高め、強欲に富を得ようとする「いやなヤツ」的な方が腑に落ちるのですが、現実はその逆です。フックには、社会的に不器用で、物事に頓着しないという姿の方が似合っているように思えます。

事実、ニュートンはフックが死に、王立協会長になってから、フックの業績を覆い隠そうと様々なことを行ったと、まことしやかに現在でも言われています。その原因はニュートンとフックとの確執があったと前述しましたが、その確執はどこから生まれてきたのでしょうか。決定的なものは、ニュートンの代名詞でもある「万有引力」に関するものでしょう。ニュートンの「光の粒子説」とフックの「光の波動説」の議論もあるようですが、1665年の「顕微鏡図譜」でフックが「重力による引力の法則」を論じていたことにあるでしょう。フックは講演でも、重力はあらゆる天体に作用するとし、重力が「距離が離れるに従って小さくなること」、重力がなければ物体は直進し続けることを説明していますが、フックの説は推論により「現象」を捉えていますけど、ニュートンのように「法則」としての「逆2乗の法則」、つまり「重力は距離の逆 2 乗に比例する」といったことは述べていません。これを除いてはフックの説にも普遍性はありますが、それは記述によるもので、「数学的な法則」には至っていないという事です。ニュートンは「数学的」に天体と重力の関係を示し、それ故に栄冠はニュートンの上にかざされます。しかし、どうもそれでフックが「ニュートンの説は自分の説をパクったものだ」と主張したようです。ニュートンとしてはムカツクでしょうね。フックとしても、自分の方が先に考え始めたのに、「あと一歩(多分)でニュートンにその業績をさらわれた」という気持ちは強かったでしょう。

この辺り、世紀のインテリジェンスといえども、誠に人間臭さを感じさせてくれ、むしろその存在を身近に感じてしまうのですが、ニュートンの憤りは半端ではなかったのかもしれません。「フックを歴史から消そうとした男 ニュートン」との評は、いまだに拭えません。まあ、ニュートンが後にそれを自省的に感じたという形跡はありませんが。やはりフックは、社会的に不器用で、どこか子供的な所があったと推察します。歴史の中でその姿も正確な人柄も、押し測るものが全くといっていいほどに残されていないという天才は他にいないのでは。いや、もしかしたら、とんでもない天才が歴史の中でその姿を消されているなんて、けっこうあるのかもしれません。歴史は「後に残った者勝ち」「残った者が作る」ものでしょうから。

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