テキトー雑学堂 タイトルバナー

科学・テクノロジー その31「クマムシ 地上最強の生命システム 人間でも可能か…」


本 子供の時に、親が仕事上の付き合いで「顕微鏡」を買わされました。親にとっては迷惑な付き合いだったかもしれませんが、それを手に入れた子供にとっては「やった!」ってな感じでした。欲しかったのですが、おねだりしても買ってはもらえなかったものが、ひょんな事で手に入ったのです。倍率はそれほど高いものではなかったと思いますが、子供にとっては十分。田舎に住んでいたので、田んぼにいるミジンコなどのプランクトンや、石垣の苔に含まれた水の中にいる微生物(これも分類ではプランクトンでしょ)を集めてきては顕微鏡で眺めていました。子供にとってそこに見えるものはまさに異次元の宇宙。ポピュラーなのはミジンコで、個体自体は数mmあるので肉眼でも点のような小さな虫として見えますが、顕微鏡で見ると、体の中まで透けて見える、これまでに見た事のない生物の姿が…。他にも、色々な形の生き物が見えます。動くもの(動物性プランクトン)、動かないもの(植物性プランクトン)。

しかし、顕微鏡の中で全く動かないものはありません。その時は知りませんでしたが、あの「ブラウン運動」です。熱運動する分子の不規則な衝突によって水中の小さなもの(ゴミや微小な植物性プランクトンなど)が、あたかも運動しているように見える、ってやつです。余談ですが、ブラウンがこの運動を水の中の花粉の動きで発見してから、半世紀以上もその原因が不明でしたが、それが分子の運動によるものであることが分かり、原子や分子の存在を証明することにもつながります。それを突き止めたのはあのアインシュタイン。

いろいろなプランクトンを眺めている中で、「ゲッ!」と驚いたやつがいます。何と、歩いているのです。その時の驚き。肉眼では(よく)見えない世界に動物のように足で歩く生き物がいる…。それがクマムシであると知ったのはしばらく後の事ですが、始めて見た時、子供の頭は「生物界の不思議」で満タン。クマムシは苔の水の中から比較的簡単に採取することができます。もちろんその姿は顕微鏡で見ないと分かりませんが。その姿はまさに「クマが歩いている」ようで、「緩歩(かんぽ)動物」と呼ばれる生物です。で、なんとこのクマムシ、凍るような寒さや長期間の乾燥、放射線にさえ耐えられる、とんでもなく「強い生命」をもった生き物だという事を知ってビックリ。真空でさえ生き延びられるとか…。まさに地上最強です。顕微鏡に映るその姿は、ホンワカとした癒し系のクマさんがノンビリと歩いているといった姿なのですが、その生き物にそれほどの生命力があるとは…。

ただ、正確に言うとそのホンワカとした姿で「最強」なのではなく、乾燥などで「樽(タン:Tun)」という姿になってから、ということです。そのタンになる時も、急激な乾燥ではアッサリと死んでしまうようです。ユックリと乾燥する中で体内の組成を変え、極限状態に備えるのです。「体内のグルコースをトレハロースに変える…」などというややこしいことは本職の生物学者に任せるとして、つまりは、体を縮めて乾眠(かんみん)と呼ばれる状態になるわけで、これを「クリプトビオシス:Cryptobiosis」と呼ぶそうです。このような能力はクマムシだけではなく、他の微生物にもあるようで、オヤジの世代ならブームとなった「シーモンキー」もその中のひとつです。一見サラサラした砂のような粒から「エビ」みたいなプランクトンが発生する様に驚いた記憶があると思います。あれは「アルテミア :Artemia」という生物だそうで、クマムシと同じくタン状態となって長期間の乾燥に耐えるとか。

再び水を得るとそのタン状態から「復活」しますが(カップヌードルみたいですな)、全てが完全に元に戻れるという訳でもないようです。復活に失敗(?)する個体もいるようで、足だけがピクピクと動いて終わりという場合もあるとか。とはいえ、その生命をタンという形で保持できるというシステムは、地上最強であると言えます。つまりは、生物としての「代謝」を極限にまで抑えて生きている訳で、死んだものが生き返るという訳ではありません。他の動物の「冬眠」や「夏眠(夏の乾期)」と仕組みは同じようですが、クマムシの場合は1シーズンではなく、10年近くもタン状態でその生命を維持できるようです。

そこで、ふと雑学脳が思ってしまいます。そのシステムを人間でも実現できないのかな…。と考えていたら、やはり、そんな研究をしている科学者がいるようです。SFではお馴染みの「冷凍睡眠:Cold sleep」があります。これはクマムシみたいに、その個体に由来する能力という訳には行きませんが、「ガラス化凍結法」というのが有力な方法であるとか。要はガラスのように、結晶化させないで水分子をバラバラの状態で固める方法で、マウスの受精卵では成功しているようです。あと、1cm程度のヌマエラビルという生物でも成功しています。とはいえ、現在の技術ではこの辺りが限界のようで、それよりも大きな生物では無理。となると人間なんてダメでしょうねえ。原理的には可能だそうですが、「お湯をかけて3分」ってなカップヌードルのように行くには、まだまだ分かっていない事が多いようです。

子供の頃に見たあの癒し系のクマムシが持っている「驚異の生命維持システム」を、もし人間が得ることができれば、親と子、おじいちゃん、おばあちゃんといった年齢の序列で出来上がった関係も無くなってしまうでしょうね。おとーさんが会社に行きたくないとかで急にタンになったりして、復活した時には子供の方が年上だったとか…、年取るのが嫌っておかーさんがタンになって、復活した時におとーさんはおじいさんになっていたり…。あちこちで「浦島太郎」が発生して訳分かんなくなったりして…。

科学・テクノロジー 目次へ



【商品検索】Powered by Amazon

↑「すべて表示」をクリックするとAmazon.co.jpの検索結果一覧に移動します。

■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
木の音 バナー
「あれこれブログ風」サイト
「不思議」「怖い」「変」を普通に考える。 バナー
「花を楽しむ」サイト
花を飾る バナー


■サイトポリシー ■プロフィール
■お問い合わせ
ページトップへ戻る

Design by Megapx / Template by s-hoshino.com
Copyright(C) Ureagnak All Rights Reserved.