テキトー雑学堂 タイトルバナー

歴史・地理 その29「岳飛 その背中に彫られた尽忠報国の国とは 民」


本 いささか安直な気もしますが、CATVで「岳飛伝」を見ていて、金という「国」といっていいのか「地域豪族」といっていいのかよく分からない存在の意匠が、モンゴルの元帝国を思わせるようなスタイルに描かれていたことに、何となく違和感を覚えてしまいました。その金軍と対峙する宋(後の南宋)の英雄「岳飛」との闘いの時代を描くドラマでしょうが、この時代は中国史の中でも、言い方は悪いのですが率直に言えば最もグチャグチャした、何が正義やら名聞やら分からない時代です。で、日本史には多少自信があるのですが、世界史は「絡み合い」が面倒くさくてあまり興味が無いのですが、近くのお国の歴史ということで、ド素人の雑学脳でチャチャを入れてみたいと思います。断っておきますが、批判したいということでは全くありません。楽しんでみようと思っているのです。

おそらく、日本では「三国志」や「水滸伝」は有名ですが、「楊冷」や「岳飛」はあまり知られていないのではないでしょうか。その存在を知った人の多くは北方謙三の小説からではないかと思います。ちなみにハードボイルド小説の氏が歴史小説を手掛け始めた時、少しばかり驚いた記憶があります。確か、その最初の歴史小説は、南北朝時代を舞台とした「武王の門」で、更に続いて書かれた南北朝ものである「破軍の星」では「第4回柴田錬三郎賞」を受賞されています。しかし、その筆力には定評のある方ですが、この南北朝時代を描かれるというのは、失礼ながら、グチャグチャの時代に切りこむだけの気概を持たれているのでしょう。確かに、様々入り乱れての大義名分無き時代は、創造力を刺激はしてくれます。正義の在り処は誰にも分かりませんから。忠臣が逆賊になったり、そのまた逆も然り。要するに、明確な「対立軸」がよく分からないのです。

それはさて置き「岳飛」です。日本での知名度はイマイチですが、中国では歴史上最高の「英雄」です。あの「関羽」に勝るとも劣らぬほどの。私が「岳飛」の存在を知ったのは、まだ北方謙三がハードボイルドから歴史にその創作活動の対象を移して、しばらくした頃だと思います(記憶は曖昧)。当時の中国に仕事で出張された知り合いに歴史好きがいて、仕事の合間に「岳飛廟」を訪れた話を聞かせてくれた時です。歴史自体は嫌いではないので「岳飛」を肴にしこたま飲みました。話は水滸伝から始まり、「遼」「金」「宋」などにおよび、岳飛の登場です。岳飛は確かにとんでもなく強かったようで、当時、おそらく最強の騎馬軍団であった金に対して連戦連勝。唯一負けたのは、梁山泊の「楊冷」に右腕をたたっ切られただけ。あと、これはあくまでも政治的ということでしょうが南宋の宰相「秦檜(しんかい)」の謀略で命を落としています。後ろから撃たれたようなものです。で、その秦檜はその後、天寿を全うしていますが、なんと岳飛廟にある岳飛親子の墓の横に夫婦で「縛られて」座っています。当然、像ですけど。岳飛廟を訪れた中国人はこの秦檜夫婦の像に唾を吐きかけるのがお約束だったそうですが、今は中国当局が禁止しています。まあ、お行儀のいい事ではありませんから。

岳飛は農民(富農)の出ですが、文武に長けて、その背中には母親が彫ったと云われている「尽忠報国(尽の字は儘のニンベンを取った字だと思います)、つまり「忠を尽くして、国に報いる」ですが、右寄りの方が特攻服にでも刺繍してそうな言葉です。私はこの言葉、母親が彫ったのなら、意味が違うと思います。「忠」の字があるのは当時の儒教的教養からでしょうが、「報国」の国とは決して王朝のことではなく、「民」のことであると考えます。その理由は、先に述べたようにこの時代がグチャグチャだからです。北方に女真人の「金(ちなみに名前の由来は金が出るからとか。マンマです)」、歴代中国王朝史に名を残す北西部、契丹人の「遼」、分類としては漢民族の「宋(南宋)」、で水滸伝の梁山泊という勢力が中原の覇を争っています。ですが「岳飛」が守っていたのは南宋ではなく、その民でしょう。事実、岳飛が後に私軍を編成して金と争っている時、戦争に付き物(正規軍でさえ)の掠奪を厳禁し、兵の統制もかなり取れていたようです。でなければ、後の「元」にも通じる騎馬兵力を有する金を相手に(元の最初の国の名前は後金です)連戦連勝とは行かないでしょう。民衆の支持を得て、地の利を生かせたからの勝利だと考えます。

この時代に在って、唯一「大義名分」なるものが立つとすれば、それは「民のために戦う」というスローガン以外にないでしょう。ちなみに、日本の応仁の乱から南北朝時代にはそんなもの全くありません。終いには、やってる本人も訳が分からなくなってくる権力闘争のドロドロです。この「岳飛」の姿勢はあの「関羽」にも通じていて、いわゆる「侠」ですね。日本ではヤクザですが、本来は「弱気を助け、強きを挫く」正義の味方です。この時代は誰が敵で、誰が見方やら分からない混乱の中で戦乱が徒に広がっていきますが、利で闘うのでもなく、名声も求めず、私軍(南宋は何もしていない)で戦い続ける「岳飛」が「中国史上最高の英雄」となるのは、痺れるほどにカッコいいからでしょうね。

ちなみに、最初にチャチャを入れると云いましたが、この時代の戦いは「国同士」の戦いというより、ドでかい山賊集団の戦いのようなもので、南宋も文化的には高いものを有していましたが、国としては殆ど腐っていたでしょう。ですから、武闘集団が各地に跋扈し、ドンパチの連続です。って、考えてみたら、日本のヤクザの抗争に似ていますね。そこでハッと気が付きました。「岳飛」のカッコよさは、同じような切った張ったの中でストイックに戦う、あの「高倉健」の姿に似ているのです。なるほど…。高倉健は中国でも人気が高かったとか。片や役者ですが、人が感じる「漢(おとこ)気、侠」には痺れるほどに惚れさせてしまう力があるのです。そう考えると、CATVで見ていた「岳飛伝」の意匠に違和感を覚えた事など、どうでもよくなってきました。この「岳飛伝」はとにかく、岳飛のカッコよさをこれでもかと見せてくれる番組なのです。であれば、楽しませてもらうのみ。

歴史・地理 目次へ



【商品検索】Powered by Amazon

↑「すべて表示」をクリックするとAmazon.co.jpの検索結果一覧に移動します。

■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
木の音 バナー
「あれこれブログ風」サイト「あれこれブログ風」サイト
「不思議」「怖い」「変」を普通に考える。 バナー
「花を楽しむ」サイト
花を飾る バナー


■サイトポリシー ■プロフィール
■お問い合わせ
ページトップへ戻る

Design by Megapx / Template by s-hoshino.com
Copyright(C) Ureagnak All Rights Reserved.