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社会・政治 その26「野球とベースボール その似て非なる文化」


本 野球の事をこの「社会・政治」の編に書く事に違和感をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、私には日本の「NPB(一般社団法人日本野球機構:にほんやきゅうきこう: Nippon Professional Baseball Organization)」が支配する「野球」と、アメリカの「MLB(メジャーリーグベースボール: Major League Baseball)」が支配する「ベースボール」が、まさに両者の文化、その社会の本質と相当にダブッて感じられるのです。「経営」というものを「意思決定のメカニズム」として単純化すれば、それは「政治」のレベルでも同様の様相が泛びあがってきます。とまあ、それは個人的な思いなのですが、両者の一番の違いを一言で云えば、社会の中で、日本の「NPB野球は閉鎖的」、で、アメリカの「MLBベースボールは開放的」という事です。

どういう事かと云えば、日本でプロになろうとすれば、リトルリーグなどからシニアリーグを経て、高校野球に進み、甲子園(大学、実業団)で実績を挙げて、そしてドラフトでプロ球団に指名されるというレールがあります。それ以外のチャンスは殆ど無い。どういう事かと云えば、例えば、「トライアウト」という入団テストがありますが、実質日本では、球団を自由契約になったプロ選手が次の契約先を探すためのもの、という性格が強い。もちろん、一般からもチャレンジ可能ですが、殆どプロになれる可能性は無いでしょう。ドラフトに掛からないで「入団テスト」でプロになったのは「巨人の星」の星飛雄馬たち、漫画の登場人物だけ。アメリカではドラフトで各球団が50名の選手を取り(日本は総枠の120名があっても、せいぜい各球団6~7人でしょう)、トライアウトも各マイナーリーグ球団が選手を集めるために、無名選手にも門戸を開いています。日本ではドラフトで指名されれば、まず野球のエリートとなりますが、アメリカの場合はドラフトで指名されても殆どの選手がマイナーからスタートします。「2軍スタートというのは日本も同じじゃないか」と言われるかもしれませんが、2軍といってもその組織構造の底深さがまるで違います。日本でもようやく「育成枠」という制度と、地域リーグがある程度、マイナー的な機能を果たし始めていますが、アメリカは3A~1A、ルーキーリーグや短期間のリーグなど、とてつもなくそのステップが多層的で、更にはその各ステップが「独立」しています。例えば、ヤンキースの2Aチームが、翌年にはレッドソックスの傘下の2Aチームになる事もあり得ます。日本の場合は1軍も2軍もひとつの球団です。2軍が独自に何かをする事はあり得ません。
    
日本でプロ野球選手になろうと思えば、子供のころからそのための環境が揃ったところから始めて、一本の線に乗って行かないと、余程の例外を除いて、まずなれません。アメリカの場合は、もし大学でベースボールに目覚めても、まだチャンスはあります。当然、楽な道ではありませんが。アメリカのアスリートたちは、ベースボール以外にも多くの選択肢を持っています。アメフト、バスケットボール、ゴルフ等々。日本の野球選手で、バスケットボールに、というのは知りません(ゴルフはあるけど、成功者は…)。商業的なベースが無いという事情もありますが、野球を目指せば、野球への道しか、ほぼありません。そして、もう一つの大きな違いはMLBの組織が全て(マイナーも含めて)独立採算性なのに比べて、NPBは各球団とも、企業に「経営されて」います。そのユニフォームの胸には、企業の社名が付けられ、チーム名も「企業名」で呼ばれます。なぜなら、プロ野球チームのほとんどが、企業の「広告・宣伝・PR・販売促進」用のチームだからです。赤字補てんという、収入で経営を賄っています。ですから、親となる企業の力が、球団より強く、NPBよりも企業の方が立場が強いという、ミョウチクリンな構造となっています。

ベースボールはご存知の通り、ホームタウンの名称かチームの愛称で呼ばれます。日本の野球は「企業の一部署」であり、ベースボールは極めて「公共性・社会性」の高い文化といっても過言ではないでしょう。それを如実に物語っているのが「リーグビジネス」という考え方、システムです。簡単に言えば、各チームの経営努力はもちろん、リーグとしても全国ネット、海外での放映収入を得て、それを各チームに分配しています。つまり、リーグとして「一つのビジネス単位」ということです。日本は違います。その証拠に、NPBの最高責任者であるコミッショナーがみな「信楽焼きの狸の置物」で、何もしていません。まあ、名誉職でしょう。リーグとしての「経営」など、0と言ってもいいでしょう。日本には「チームビジネス」しかありません。
    
「チームビジネス」では、大都市部の大きなマーケットを押さえた者が勝ちです。交通網など、その都市のインフラを間接的に自分の「利」とできますし、如何せん、球場へ足を運べるお客の数が地方と比べるととんでもない差となります。で、テレビ放映収入にしても、キー局の集中する都市部では大きな収入源になります。地方のローカル局が頑張っても、その放映料はたかが知れています。そして、その差がそのまま「チームの収入の差」となります。その収入は、リーグのためには使われません。簡単に言えば「利益の独占」で、「公共性」などまったく考慮はされません。その利益で強くなって(金で有力選手を集める)、そしてまた「利益」を得る、という構造です。企業活動の中に「球団」が組み込まれているのです。最近ではそうした構造的体質が少しは変わってきているように思えますが、それはメディアの多様化(特にCATV)で、多くの人が「自分の好きなチームの試合を見られるようになった」からでしょう。嘗ての、「テレビ放映収入」の「独占」を都市部のチームができなくなってきたという事です。

1995年くらいまでは、日本の野球もアメリカのベースボールもそれ程「事業規模」に差はありませんでした。しかし、2010年にはその差が4倍くらいになっています。当然、成長しているのはMLB、アメリカです。日本はその間、ズッとほぼ横ばい。これは推測ですけど、今現在では6倍程度の差がついているのではないでしょうか。経営努力の差、としか言いようがありません。数人の老人経営者が「密室」で、選手もファンも無視して勝手に野球を弄んでいます。以前、球団が少なくなりかけ、1リーグ制という案がその老人たちから一方的に出され、日本の野球が危機に陥りかけた時、それを救ったのは選手とファンです。その時に、選手の意見に対して、ある老人が「たかが選手のくせに」と見下すような発言をしました。もし、アメリカでそのような発言を球団の上層にいる者がしたとしたら、まあ、とんでもない事になるでしょうね。この事をとっても、日本の野球選手は「企業の社員」で、ベースボールの選手は「ファンから尊敬される社会的存在」という事が明らかですね。
   
そういえば、昔、某球団の監督が更迭された時、それを親企業の社長が「企業内の人事異動」という発言をしましたが、笑うと同時にうすら寒くなってきました。皆が熱狂して、そのプレーに一喜一憂し、手を合わせてまでその活躍を祈るファンの姿をどう考えているのでしょうか。まあ、殆ど考えていませんね。私は個人的に、もう「技術的・戦術的」なレベルでは、野球もベースボールも互角に戦えるとかなり前から思っていました。日本の選手がMLBでプレーし、まさかそんな事が可能になるとはと思っていなかった「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック:World Baseball Classic)が実現し、ますます野球が面白くなってきているのに、相変わらず「公共性」というものが根付いていないのが日本の野球です。戦前の「六大学リーグ」への熱狂ぶりが、この国に野球という文化が既に成立している証拠なのに、もう企業は野球から撤退すればいい頃では。そうしなければ、このまま日本の野球は停滞したままになりそうな気がします。それで、日本のプロ野球が衰退するというのなら、それは野球が日本に定着していなかったということですよ。それでいいじゃないですか。

批判めいたことばかり書いているかもしれませんが、ン十年前から比べたらかなり良い傾向になっているとは思います。日本選手がMLBに行くのは大賛成で、できれば、NPBとMLBのインターシリーズなんてあって、本当の「ワールドシリーズ」を見てみたいと思っています。MLBだけで「ワールド」というのもナンダカナァ…。最後に、取って付けたような事を言いますが、文化としての野球とベースボールとの最大の違いは「引き分け」です。日本にはありますが、アメリカにはない。野球を「商売効率」として見ているか、「勝負」として捉えているかの差でしょう。だから、「勝負」を見るという面白さに関しては、MLB、ですね。

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