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その他 その11「ブルース… 耳から鱗が落ちた瞬間 Oh,Blues!」


本 瀬戸内海沿岸の某地方都市出身の私は、大学生になって東京に来るまでは音楽的な嗜好が偏っていたのか(まあ、趣味はもともと偏るものですけど)、サイモン&ガーファンクルやアン・マレー、カーペンターズを好んで聞いていました。クラシックも好きで、やはりモーツァルトでしょ、ってな感じです。ビートルズやローリング・ストーンズなどの、いわゆるロックは好まず、旋律の美しさ、ボーカリストの声の美しさを楽しんでいました。ディーン・マーチンやビング・クロスビーも好きでした(古…)。受験時代、ラジオから流れてくる、当時流行っていたグラムロック(今思うと、いい加減な区分)と称するジャンルのTレックス(マークボラン)や、クィーンなどを「妙な音楽…」と思って聞いていました。特にクィーンは「これ、クラッシックか…?」と思っていました。

音楽に関してはどちらかといえば保守的で、当時日本公演で自分の住む地方都市に来たレッド・ツェッペリンも私の耳には「妙な音楽」でした。ちなみにレッド・ツェッペリンのレッドは赤の "Red" だと思っていましたが "Led" で、「導かれたツェッペリン…?」(正解は「鉛の」。Leadの過去形、過去分詞形ではなく、鉛の発音記号、 "Led" )。それは置いといて、「旋律の美しさ」あってこその音楽という嗜好をかなり強く持っていました。クラスにローリング・ストーンズのファンがいて、その話になると、「あんなの…」ってな感じの態度モロ出しで、喧嘩になりかける程でした。まあ、喰わず嫌いの典型であったのかも、です。
   
そして東京に出てきて、相変わらずラジカセ(CDなんてありません)で同様の音楽を楽しんでいたのですが、やはり周りにはロックファンが圧倒的。バイト先の学生がレッド・ツェッペリンのファンで、ツェッペリンのライブ演奏を映画にしたものが公演されていて、「タダ券があるから行こう」と誘われた時、あまり興味は無かったのですが、多分、暇だったんでしょうね。一緒に行きました。ホント、お付き合いのつもりで行ったのですが、その映画のオープニングでいきなり「(レッド・ツェッペリンの)ロックンロール」。今は亡きジョン・ボーナムのドラムから始まって、ジミー・ペイジのギター、名手ジョン・ポール・ジョーンズのベース、そしてロバート・プラント全盛のボーカル! いきなりですよ! 映画館はZep(レッドツェッペリンの略称)ファンの大歓声。その中で轟くZepサウンド! 私の頭の中に暴力的ともいえる大震動が突っ込んできました。この曲は知りませんでしたが、特に日本でヒットした曲のようです。いわゆるロックンロールで、8ビートのサウンドに「ブルース進行」の曲です。

ブルース進行とはトニック、サブドミナント、ドミナントの3コードで構成された12小節のコード進行の基本形。キーがEなら、トニックがEでサブドミナントは4度上のA、ドミナントは5度上のBで、「E→E(or A)→E→E→A→A→E→E→B→A→E→B」が循環していきます。バリエーションは色々。まあ、当時のロックとしては先祖返りのようなシンプル極まりないサウンドです。が、そのシンプルでパワフルなロックンロールが私の脳のどこかを一発で変えてしまったのかもしれません。「なんだ、こりゃ…!」ってな感じです。ハイ、鳥肌が立つほどにエキサイトしてしまいました。遅咲きの「ロックへの目覚め」です。それ以来、ブリティッシュハードを聞き漁り始めます。レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ユーライア・ヒープ、テンイヤーズ・アフター、ジェフベック、そしてエリック・クラプトン。完全に宗旨替えのようなものです。音楽的な嗜好が変わってしまいました。ビートルズやローリングストーンズも改めて聞き始めました。まあ、喰わず嫌いが、なんでも食べる好い子になったのでしょう。
   
そして、エリック・クラプトンを好んで聞くようになった時、自分が好む「あるリズムと音、コード進行、テイスト」がある事を不思議に思い、色々と友人知人に聞いたり、本を読んで調べてみると、こうしたブリティッシュ・サウンドにアメリカの黒人音楽であるブルースが強い影響を与えていることを知りました。「ブルースって…、淡谷のり子…」。その位の認識しかありませんでした。とりあえずブルースといえばBB・キングくらいしか思いつかなかったので、そのアルバムを買ってきたのですが、彼のブルースはホーンセッションなどをバックにしたゴージャスな、いわゆる「ジャンプ・ブルース」で、面白くなくはないのですが、なんかちょっと違う。もちろん、彼のギター、ルシール(ギブソンES345?)のハードゲージを楽々チョーキング(弦を指で持ち上げる。ベントともいいます)するサウンドは面白いのですが、やはりこれじゃない。

で、今度は古いブルースのレコードを探して中古レコード店巡りが始まります。訳も分からず色々と集め、いわゆる「シカゴブルース」なるものの中で、オーティス・ラッシュ、マディ・ウォーターズ、ジョン・リー・フッカー、エルモア・ジェイムズらを聞いて、この辺りでまさに「目から鱗」ではなく「耳から鱗」が落ちました。録音状態も悪く、ミキシングなど関係ないレコードから、官能的で心地よいサウンドが聞こえてくるのです。南部のブルースへ寄って行くとT-ボーン・ウォーカー、ライトニング・ホプキンス、そして、知らず知らずのうちにブルースの故郷であるミシシッピー・デルタへと遡上し、「ブルースの神様」ロバート・ジョンソン(略してロバジョン)に行き着きました。ロバジョンは女にもてたそうで、20代で、嫉妬した女に毒殺されたようです。彼のアルバムは2枚しか残されていません。私の音楽好きな友人にこのロバジョンの曲を聴かせると10人のうち9人は「何、これ…」です。しかし、私にとっては、このロバジョンのレコードは宝物で、今でもレコードと、やっと出たCDを持っています。今のサウンドから比べたら、何という事はないギターの弾き語りですが、酔ってしまうのです。鮭が生まれた川を遡上するのと同じようにミシシッピー川を遡上していった私は、ようやく、自分が何故か好んでしまう「あるリズムと音、コード進行、テイスト」の源流に出会ったのです。
      
「これが、Blues か…」。シャッフルと呼ばれる一拍三連の2拍目を休符にする、跳ねるようなリズム。ミュート(消音)を入れればそれは弦楽器の音というより、パーカッシブな打楽器に近い音です。そして、引きずるように歩くベースライン(ウォーキング・ベース)。最初にロバジョンを聞いた時、二人でギターを弾いているのかと思いました。ブルースには一般に「ブルーノート・スケール」といわれる5音階(ペンタトニック・スケール)があり、その中には微妙な「4分の1音(クォーター)」が含まれ、チョーキングで演奏します。厳密に4分の1音と規定されている訳ではないのですが、西欧の1オクターブを12に調律された音階には存在しない音です。余談になるかもしれませんが、文化人類学的にはあらゆる民族はその音楽にそれぞれの「(1オクターブ中の)5音階」を持っているといいます。日本の「ヨナ(四、七)抜き音階(ドレミソラ)」もその5音階であり、雅楽の旋律がこれに当たるそうです(スピバーグの映画、未知との遭遇でもコミュニケーションに5音階が使われていました)。

ブルースはギターで成立したものと考えますけど、それは在りあわせのもので作られた手製のものから始まったのでしょう。アメリカの悲しい歴史から生まれた黒人音楽がミシシッピー川を下りながら独自のサウンドを作り上げ、その導火線が60年代、70年代のイギリスのサウンドに、まさに「カンブリア大爆発」とでも言いたくなる大進化をもたらせたのでしょう。音楽にとっては奇跡の時代です。ブルース自体はマイナーな音楽ジャンルですが、それが現代のあらゆる音楽に影響を与え、今のサウンドはその上に成り立っていると言っても過言ではないと思います。エリッククラプトンはアメリカから輸入されたブルースのレコードを、溝が擦り切れて白くなるまで聞いたと言います。

ちなみに、日本の演歌はブルースに似ていると言われることがありますが、私に言わせれば論外。あれは歌謡であって、ブルースのブルースたる由縁は「演奏」にあります。そして、その歌には演歌ではなく、「万葉集」のように人間臭い闊達さがあるように思えます。

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