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その他 その24「工芸品としての官能的な美しさ ギター」


本 私の若い頃、ギターなる楽器は「フォークソング」全盛の中でかなり身近、というか、流行のように皆が手にする楽器でした。小学生の頃、「縦笛(リコーダ)」や「木琴・鉄琴」「ハーモニカ」「ピアニカ(ヤマハと東海楽器の商標、鈴木楽器製作所はメロディオン:縦笛に鍵盤のついた楽器で、鍵盤ハーモニカ)」などは身近な楽器でしたが、ギターのように「演奏だけではなく、歌の伴奏として一人で扱える」楽器であるギターは皆の憧れの楽器でした。ピアノもそうですが、これは良家の子女のものであり、友人の一人がバイオリンを習っていましたが特殊な存在。当時は弦がナイロンの「クラッシックギター」と、弦がスチールである「フォークギター」の区別もつきませんでした。ちなみに、フォークギターというのは俗称で、正確には「アコースティックギター(広義にはクラッシックギターも含む)」で、電気信号で音を出力する「エレクトリックギター」と区別をするためにそう呼ばれます。最近では「アンプラグド(unplugged)」なんて表現もされます。

私自身は、その頃、特にギターに対しての興味は持っていませんでした。楽器を演奏するなんて高尚な趣味は持ち合わせていませんでしたので。まあ、とても買ってもらえる状況ではなかったという事情もありますけど…。当時の友人たちがやっていた奏法としては、コードを左手で押さえて弦をかき鳴らす「ストローク奏法」や、ちょっと器用な人はコードを順に分散して弾く「アルペジオ」奏法、更に器用な人は右手3本の指でコードの音を跳ねるように分散して弾く「スリーフィンガー奏法」などでしたが、殆どが「ストローク」で、PPM(ピーター・ポール&マリー、古…))の「パフ・マジック・ザ ・ドラゴン」をスリーフィンガーで伴奏できる人などは「神様」でした。エレクトリックギターは「エレキ」と簡略化されて呼ばれ、まさにベンチャーズサウンドが大流行し、「テケテケテケ…」というのがエレキの代名詞のようにも言われていました。そのベンチャーズサウンドのモズライト(エレキギターの名称)を抱えて自在にかき鳴らす寺内タケシ(古…)は、もう神様仏様もいい所です。しかしながら、私はギターに触る機会さえ殆どなく、東京に出てきました。
      
前置きが冗長になってしまいましたが、それまでにギターなど殆ど縁のなかった私がギターに目覚めたのは、妙な形からです。とりあえず都会の空気を吸って、ご多分に漏れずロックの洗礼を受けた田舎者は何となくギターが欲しくなり始めました。で、楽器店を見て回るのですが、そこで出会うギターたちに息を呑みました。まだ弾ける訳ではありませんから、音にではなく、その「工芸品」としての美しさにです。特に店の奥の方のショーウィンドー内に飾ってあるビンテージギターたちの美しさに…。何とも美しい。それはひとつの芸術品のように私の目には映りました。お値段を見ると、「ああ、私には一生買えないな…」と貧乏学生には絶望の一撃を加えるのに十分な○の数です。それから私の楽器店通いが始まります。ショウウィンドーを眺めているだけですけど。それだけで楽しかったのです。博物館にいるように。その内に顔見知りになった店員が、「よかったら、弾いてみる」と声をかけてくれましたが、とんでもない…。好意なんでしょうが、その言葉にはからかわれているように感じ、憎悪さえ感じました。これほどのお値段と美しいものを、私などが…。

とまあ、ひねくれているのは仕方ないとして、とにかくその美しさに魅入られ眺めているうちに、あることに気が付きました。私が美しいと感じているのは造形もさることながら、その素材である木です。それが、ある年代を境に全くと言っていいほど違うのです。それは1960年代前半とそれ以降です。60年代に作られたギターの木は、それがアコースティックギターであれエレキギターであれ、渋い艶と詰まった木地、そして芸術的な杢目(もくめ)を持っているのですが、70年代以降のギターには、それがあまり見られず、新しいものは次第に「職人的な工芸品」から「工場でのマス・プロダクト」といったように変わって行くのです。なんでかな…。その疑問に、ある老舗のギターショップの方が答えてくれました。それは、やはり木です。
     
1950年代は戦後のアメリカ大繁栄の年代で、その頃には一般の工芸品などに使う高級な木材がふんだんに使われていたそうです。特にカナダの寒冷な地方で育ったメイプルなどは、木地が詰まった美しい杢目の木で、「トラ杢(正目に対して直角に入る横線の模様)」や「タマ杢(木の地に入る玉模様)」などの宝石の如き木材です。また、同様の美しさを持つブラジリアン・ローズウッド(別名、ハカランダ)は1960年代に、高級家具の需要増で乱伐が問題となり原木輸出が規制されています(1992年のワシントン条約では絶滅危惧種として輸出が大規模に規制されます)。その他、スプルース(松)、シダー(スギ)、マホガニー、ウォルナット(胡桃)なども60年代のものは美しいのです。60年代のギターたちはそうした、今ではもう手に入らないような贅沢な木材で作られているのです。ちなみに、昔のパーシモン(柿)で作られた、ゴルフのドライバーヘッドもこの50年代のものから60年代前半のものが名器とされています。その時代の特級品の木材で作られているからです。
    
今でもそうした希少な銘木を材料に作られているギターがありますが、やはり相当にお高い…。ギターは楽器ですから、当然弾いてナンボでしょう。私も多少は弾けますし、ナンチャッテ・バンドを楽しんだ事もあります。下手ですけど…。しかし、私のギター好きは倒錯しているのでしょうか、その、「官能的」とまで表現したい美しさに惹きつけられるのです。かつて、グレッチのカントリージェントルメン(チェット・アトキンス監修)を店のショーウインドーで目にした時、一目惚れして、何回も店に通い、70年代のものですから、死ぬ気になれば手が届く額でしたので、若い頃、最高分割払いで購入した事があります。もう、弾くのももったいないような美しさ(変…?)。しかし、お金に困って結局は泣きの涙で売却しました。いまだに後悔…。
 
今、私の手元にあるのは某メーカーの、幻のハカランダをバックとサイドに使ったものと、総コア(アカシア)のアコースティックギター。コア材はウクレレに使われますが、今ではハカランダ同様、希少な木材です。「トラ杢」もバッチリの逸品です。それからメイプルの表板にマホガニーの裏板のエレクトリックギター。これまた「トラ杢」が出ています。この3本は手放すとたぶんもう手に入らないでしょう。弾いているより眺めている方の時間が長い…。ちなみに、音は最高です。特にハカランダの醸し出す音は。私は演奏という事では下手ですが、良い素材の楽器の音を聞いていますので、余計なお世話ですけど「ギターは、出したお金を決して裏切らない」楽器と言い切れます。その値段は「素材」の値段ですから。エレクトリックギターもその音は素材である「木」が奏でています。ウイーンフィルの伝統あるバイオリンやチェロなどを見てもその美しさに溜息が出ます。楽器は音が「本価値」だろって、ハイ、それは十分わかっています、です…。

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